| Vol. 9 2011.04.25 | |
| ３月２７日(日) 暖かくてよい天気が続きそうだ。今日は高田九江文化交換研修団の方々１０人が張家界から九江に来られる。昼間の１２時半ごろに交換研修団を迎えるため、九江市外事弁事室の于紅(ウコウ)さんと九江駅で待ち合わせる。九江から南昌まで高速鉄道で行く。切符はすべ于紅さんが用意をしてくれているのでいたって気楽であった。南昌まで４５分、于紅さんは初めて乗るのだそうだが、私は１１月につづいて２回目。中国の人に少しわかったような説明をするのも楽しい。南昌に着くと、文化交換研修団は二つ向こうのホームに長沙からの列車で来るという。しかし、列車が着くまではまだ１時間以上あるとのこと。于紅さんはここでしばらく待ちましょうと言い、ベンチを探してくれるのだが、ホームの上にはいすなど何一つない。 そこで、まだ一時間以上あるので駅から出て、何か食べようということになった。駅からいったん出て食事をすませたのはよかったがこの後がまたたいへんであった。長沙からの列車到着時までに改札が始まらないらしい。もし、この広い駅でいったん文化交換研修団を見失うと今度はなかなか見つからない。切符はあるし、出迎えだといっても駅員がこれは決まりだからと言ってどうしても中には入れてくれない。でも、于紅さんが駅員に噛み付くように交渉して、やっと入場券を手に入れた。これならすぐにでも中に入れると、于紅さんはほっとした顔で笑顔に戻った。 到着ホームで待っている間も次々と列車が入ってくる。その中には黒龍江省のハルピンや雲南省の昆明など４０数時間かかる列車もある。改めて、南昌が鉄道の要所であることがわかった。 ２０分ほど文化交換研修団の方々が到着。皆さん元気そうだった。すぐホテルへ。豪華なホテルである。夜は近くのレストランで九江市外事弁事室の上司の人も呼んで食事会。于紅さんが日本人向きの料理にして欲しいとあらかじめコックに言っておいてくれていたので、食べやすく皆さんは満足そうであった。 ３月２８日（月） 高田九江文化交換研修団の方々は市内と廬山の二手に分かれて観光である。市内の方は日本学科の学生が二名通訳として付き添う。４時前に大学に戻られ、授業参加と校内見学である。その時間、ちょうど私のクラスがあったので、一年生の授業を見てもらうことになった。まだまだ日本語は十分に理解していないが、日本の大和高田からのお客さんだと言うとみんな張り切って授業に取り組んでいた。その後は高田九江・友好の部屋での歓迎会。学生たちが50人以上も集まって高田九江文化交換研修団の方々と交歓を深めた。学生たちの作文に交換研修団の方々は感銘を受けられていた。夜は大学主催の食事会。にぎやかなうちに夜はふけていった。翌日無事、日本に変えられたとの連絡をいただきほっとした。
数日前に、茶道を研究しておられる呉先生からクコ茶をいただいた。そのお茶を入れてみると香りもよく、味もなかなかである。思わずお礼の手紙を出そうと、とりあえず日本語で書いた。そこで、日本語学科の学生に頼み、中国語に意訳してもらった。「一期一会を大切にしたい」というところはその学生もよく理解してうまく訳してくれていた。その学生に頼んで手紙を呉先生に届けてもらうと、その後、呉先生からの返事があるといってその学生は丁寧に口頭で伝えてくれた。
少し楽になったからといって無理をしないことが風邪には大事なので今日は家で過ごすことにした。午前中は少し中国語の勉強をして、昼から散歩がてら散髪に出かけた。学生街の理容室がずらっと並んでいるところだ。元気のありそうな店に入ると、店長らしい２１〜２２歳のイケメンの美容師がでてきて席に案内してくれた。注文はあまり短くしないようにとだけお願いした。はさみの使い方も言葉遣いも丁寧で、女の子にもてるのだろうと思った。仕上がりもよく、支払いはと聞くと、１０元ですとのこと。こんなに安くていいのかと申し訳なく、「サンキュー」を連発して店を出た。昼からは雨は上がったが、一度なおした暖房器具を出すほど気温が上がらない。１年生の劉君たちはバーベキューに行きますとうれしそうに行っていたが、無事にやれているのか心配になった。
天気はひやりとした冷たさの中に青空が見え、最高の１日になった。出発。窓からの気持ちのよい風を楽しみながら、外を見ていると、道沿いには明日の墓参りの花飾りなどお供え物を売る店が出ていた。両側につづく畑ではあちらこちらに菜の花がうえられており、鮮やかな黄色が春の光に映えて美しい。料金所を通り、有料道路に入る。このあたりの有料道路は、生活道路としても共有しているのか、道の両側を人が歩いている。そして、一般道路ともつながっている。私の乗ったバスも気がつけば山道に入ってしまっている。一時間ほど走ると、山の峰がかぶさってくるような景色のところに展望台があり、そこでいったん休憩。学生たちは写真を取り合っていた。私も、グループ以外の若い人たちも声をかけられ、いっしょに写真に納まった。 そこから３０ほどでいよいよ、盧山の「三重の滝」。ここから滝まで歩いて１時間半ほどである。道は険しいが、石の階段が整備されていて安全である。みんなでわいわい言いながらあっという間に到着。三つの滝が連なって見事な景色だ。いちばん上から最後の滝の滝壺まで２１５ｍあり、昨日の雨で水量も申し分なく、泡となって散っている小さな水粒が顔や腕にかかる。気持ちがいい。そこで、また写真を撮ったり学生たちが用意してくれた簡単な昼食を食べたりしてから下山した。 その後は、白鹿洞書院に行く。名前の由来に即して真っ白な鹿が飼われていた。朱熹の字や当時をしのばせる文物が展示してあり、興味深かった。大学に戻ったのは４時前、みんなで早いが夕食にしようと誘い、歓談が１時間。有意義な休日であった。
朝は少し冷えたが、日中はよい天気になった。連休最終日ということもあり、午後から市内に出かけた。カメラ、パソコンのスーパーに行く。日本のすべてのメーカーのカメラがおいてある。インスタントカメラに毛の生えた程度でよいと考えていたので、安いものを探していたら、一眼レフもどきの日本のカメラがあった。どうしようかと迷っていると「どうぞご覧ください」ときれいな日本語で中国人の店員に薦められた。彼女は東京の大学に留学しているのだけれど、今度の地震で両親に帰ってこいといわれて九江に帰り、今カメラ屋でアルバイトをしているとのこと。日本語のできる店員といろいろしゃべっているうちに、決めてしまった。帰ってからインターネットで調べると２万５千円のカメラが２万円までで買うことができた。
天気は今日から下り坂である。うっとうしい空を見上げていたら、朝から中国人の先生のメールが飛び込んできた。先に出した論文の発表会があり、初めと終わりの部分を説明しなければならない。急ぐのでそれを見て欲しいとのこと。どうやら、論文が審査レベルまでいっているようなので、１時間あまり集中して添削した。そして、送り返した。早く合格して欲しい。いつも、急な仕事を持ってこられてあわてされるからである。 午後から学生たちが遊びに来て、しばらくしゃべって帰った。今週の土曜日に学生たちが食材を持ち込んでパーティーをしようという提案だった。学生たちが気楽に来てくれるのはうれしい。
今日は大雨の予報だったが以外に降らず、傘はカバンの中にしまわれたままだった。中４日、５日ぶりの授業だったが、予定通り進めた。同じところの授業を何度もやれるのはやはり楽である。職員室へ行くと中国人教師の熊輝先生がいて、先日の論文の話なった。論文発表で洛陽へ行くこと、そして５月１０日ごろには合格の成否がわかるらしい。でも、ここまできたら多分だいじょうぶだと伝えて、「期待している」といって授業のある教室へ向かった。授業を三コマ終って急いで晩御飯をすませ、７時からの日本クラブへいく。先週に引き続き、市役所のウコウさんが来校。ちょっと緊張しつつ活動を始める。今日は、ディベートをしようと材料を用意していった。さすがに、中国の女子大生は自己主張がはっきりしていて、真剣に話し合ってくれた。物事への取り組む姿勢がすばらしい。あっという間の一時間半だった。
校内には職員の宿舎もたくさんあるので、朝は通園バスがとまり、子どもたちを乗せていく。校内は坂が多いので、自転車は役に立たない。宿舎と学生街のある門との間を遊園地にある馬車のような大きさの電気自動車が絶えず行き来し、学生たちは１元で乗ることできる。また、朝と祝儀用の時間には路線バスが校内を回って職員のために便宜を図っている。 私の宿舎のあるホワイトハウスは国際交流センターなので、外からの来客も多く玄関先には高級な自動車がずらりと並んでいる。大学の寮といえば、男子学生の寮の周辺は原付のバイクがずらりと並んでいる。大学は丘の中腹にあるので、坂道が多く、自転車はあまり実用的とはいえないので、ほとんどが電動バイクである。男子学生は女の子を乗せるにも使っているようである。パソコンに携帯、バイクとなれば出費もたいへんだと改めて親たちの苦労を感じる。
午後から学生たちと一級試験合格のお祝いパーティーをすることになっている。そこで、午前中は掃除をしたり、学生たちの好物のフライドポテトをあげたりしているうちに過ぎた。３時から肖さんがやってきて、中国語の勉強をする。彼女はカードを用意したり、テキストを作ったりととても熱心である。先生になってもきっとすばらしい教師になるだろうと思った。４時から男子学生２人と女子学生４人がやってきた。故郷から食材をもってきたということで、台所でみんなが料理を作り始めた。女子学生の何さんは教室では目立たないのだか、料理となるとリーダーシップを十二分に発揮していた。男子学生は何さんに言われるまま、長いもの皮むきをしている。鳥を一匹さばいて、スープを作るもの、トマトとカリフラワーの炒め物のレシピをインターネットで調べてきたとメモを見ながら作っているもの、１時間ほどで５皿ほどの料理ができた。レンコンと豚肉の炒め物など絶品であった。長芋の鶏肉スープは何さんの自慢でさすがによくできていて、栄養価の高いものであった。九時前までみんなでしゃべったり、歌を歌ったりして終ったが、それからもみんなであっという間に片付けてくれた。台所をぴかぴかにして、うれしそうに学生たちは寮に帰っていった。
今日は朝から天気がよく、気温もぐんぐん上がっている。ここ九江は物の値段が安いところである。そんな九江でも食料品を中心に物の値段がじりじり上がり始めている。市場で野菜を買っても以前の倍ほどの値段がしている。学生たちの話でも、服や文房具類も少しずつ値上がりして、厳しいとのぼやきが聞こえる。今の中国の経済発展を考えれば、物価の値上がりは正常なことである。特に沿岸部の都市と内陸部の田舎の経済格差を考えるとき、農産物の値上がりは農村に経済効果を与え、都市への人口集中も緩和されることになる。そんな話を学生にすると、今、中国は日本の1970年代とまったく同じ状況です。その頃の日本の政策を勉強していきたいと話す学生もいた。 日本語学科は３クラスある。そのうち３年制の専科が２クラス、４年生の本科が１クラスである。本科は専科に比べて入学試験の合格最低点はかなり高い。しかし、本科の中に英語学科や他の学部が不合格になって第二希望で入ってくるものもいる。そんな学生は１年の当初はなかなか学習への意欲が高まらない。それに比べて、専科は三年間で日本語を身につけたいとやる気が感じられた。しかし、後期に入って、第二希望で入った学生もやっと心がついたのか授業を熱心に受けるようになってきている。もともとは優秀なクラスなので授業はやりやすくなってきている。 学生たちに授業でペットのことをテーマにした。どんな動物を飼ったことがあるかと聞くと、ほとんど飼っていない。犬でも２〜３人であり、猫はほとんどいない。金持ちがチンのような犬を連れている場面をたまには見るが、町では犬はほとんど見ない。どうやら「犬は糞をまき散らして、衛生上よくない」と言うので犬を飼わないらしい。また、鶏を飼っているうちも多いので、犬を飼うと近所から何かと言われるのかも知れない。最も、大学の前にも、一軒寒い時にだけ開店する犬の肉を食べさせる店がある。あっさりして鯨や馬よりも美味しいらしいが、昔からのこんな風習があるので犬がペットとは思わないのだろう。
今日から少し天気は下り坂である。３日ほど雨が続くようである。でも気温は高いので風邪を引いている学生が多いので、恵みの雨となるだろう。今朝、NHKニュースで放射線警戒レベルが最高の７になったと聞いた。ロシアのチェルノブイリほどではないしても、アメリカのスリーマイル島の放射線量を超えているということだった。福島の人たちの緊急避難や外出規制などいよいよ新学期が始まる学校にとっては、さらに配慮を要することが増えて、たいへんである。 しかし、日本人はすごいと思う。強い余震も続き、さらに亡くなった人やけがをした人、停電などが増えている中で、冷静さを失わない。原発の現場で必死に対応している人たちのニュースも届いているのかもしれないので、協働意識も生まれているのかもしれない。いずれにしても、この状況をうまく解決できたら、日本の技術力や日本人の団結力の高さを世界中の人から評価されると思う。
昨日は日本のプロ野球の開幕日であった。大きな地震のせいで開幕が二週間以上遅れた。巨人軍のオーナーの渡辺さんはあまり好きなタイプではないが、このたびのプロ野球の開幕を予定通りにしたいと最後までがんばったことは評価できると思う。日本という国は「一億総 ○○」という言葉が好きで、今度のようなことが起きるとすぐに楽しいことや遊びなどへの自粛という言葉が独り歩きする。おかげで日本中の観光地やイベントに軒並みお客さんが来なくてたいへん困っているそうである。復興にお金がかかるのだから、今こそ日本を元気にして、景気回復をめざすほうがよいと思う。元気をなくすことがいちばん困ったことである。 やはり野球はおもしろい。阪神が勝ったのでインターネットで「一球情報」を見ながら飲んだビールは一段と美味しかった。
木曜日の夜は日本語クラブの日である。７時には学生の集まりが悪かったので、来てくれている学生と卓球をして時間をつぶした。久しぶりの卓球であったが、すぐコツを思い出した。学生たちは「先生はすごいですね、日本でどれくらいやっていたのですか」と尋ねてくる。おせいじ半分だから、温泉ピンポンだよと答えておいた。 そのうち学生も３０人ほど集まってきた。私のグループは先週に続いて、ディベートをすることにした。テーマは私が考えた。「生活するのは都会がよいか、田舎がよいか」と「恋人選びは外見か性格か」の二つである。 「生活するのは都会がよいか、田舎がよいか」では、都会派の意見は、「医療や教育が進んでいて安心できる。」「仕事のチャンスが多い。」「運動設備や文化施設が整備されている」「発展が早く、さまざまな情報が早く手に入る。」「競争社会なので、自分の能力が高められる」などであった。 それに対して、田舎派は、「空気がよく、静かで環境がよい」「都会のようにストレスがなく、いつも穏やかな気持ちで過ごせ、悪い人もいない」「隣や近所の人といつも声をかけあって、孤独ではない」「土地が安いので、家も手に入りやすい。家を手に入れるために疲れ果ててしまう都会とはちがう」などであった。こんな意見を聞いてみると、今の中国の若者はもう豊かな世代であり、金儲けより、自分の生活を大切にしたいと考えるようになってきていることが分かり、認識を新たにした。
朝から気持ちの悪いほどの蒸し暖かさだった。あさ、職員室を覗くと、張先生が教科書と首引きで勉強されていた。張先生はいつも教材研究に熱心で、私が行くといつも質問をされる。今日も二つほどの質問に答えると、張先生は鞄の中から卵を二つ取り出して、ゆで卵なので食べてくださいとのことだった。その卵はお茶の中でゆでられていて、きれいな茶色をしていた。自分の家で鶏を飼っていて、今朝生んだ卵だということである。子どもさんは卵が好きなので、飼っているとのこと。そういえば、大学の周辺を散歩していても、住宅街ならちょっとした空き地でも鶏が見られる。まさに、自給自足である。そういえば、宿舎の玄関前の花庭にも誰が植えたかチンゲンサイが植えられていた。さすがに、それは一月ほどで抜かれて、背の低い植木に変わっていた。学校の管理者もたいへんである。
天気は悪いが気温が高くて動けば汗ばむほどだ。最近、学生たちが太極拳をしている姿をよく見る。体育の授業で集中的に学んでいることもあり、バスケットボールをしに来た学生が準備運動に使ったり、朝の授業前に体作りに使ったりしている。これまでは公園で高齢者がやっている姿はよく見られたが、授業きたことはなかった。この国が経済発展と共に自国の文化を振り返るようになったのも自信の表れかもしれない。 昼からも暖かい。そんなときでも、中国の女の子はコートを着ている。これまでも、私の部屋に遊びに来た女子学生に「暖房が入っているからコートを脱ぎなさい」というと、困った顔をしてなかなか脱がないことが多かった。最も、九江では冬も暖房はあまり使わない。冬の氷点下の日も教室や寮はもちろんのこと校内食堂にも暖房が入らない。町の食堂でも暖房が入っているのは豪華な店だけ。それだけに、室内でもコートが手放せず、着るものの一部になっているらしい。だから、コートを脱ぐのに抵抗があるようだ。
薄紅の八重桜が満開で汗ばむほどの日曜日です。今日は「さくら祭り」という行事があった。日本語学科の学生
を中心にもっと日本のことに関心をもってもらおうと行っている行事だ。女子学生たちがゆかたを着て踊ったり、日本の歌を歌ったりした。また、中国の茶道と日本の茶道の紹介もあった。日本の茶道と行っても日本の指導者がいないので、インターネットを通じて知ったことを学生たちがイメージして作ったものなので、思わず噴出したくなる場面もあった。 また、町のすし屋さんに協賛してもらい、本格的な寿司をつくってくれるコーナーもあった。学生たちはこのイベントをするのにお金を出し合っている。そのかわりにそのお寿司を一つ食べることができる。われわれ外国人教師は招待でどんどん振舞ってくれた。美味しかった。 他の学科の学生たちも多数見学に来ていて、終わりには中国劇やストリートダンスなども飛び出してよく盛り上がっていた。
４月２０日（水） 今日は学生からの悩み相談。相談の内容は宿舎の部屋には女子学生６人いる。そして、自分以外にみんな彼氏がいる。部屋の友達からどうして彼氏を作らないの、一人ではさびしいでしょうと言われているらしい。男子学生の友だちはほしいが、自分から男の子に言うような性格ではないし、日本語学科は男子学生があまりいない。クラスによっては女子学生ばかりというところもあるので知り合う機会も少ない。こんな悩みをもつ彼女はとてもかわいいし、すでに日本語検定一級試験も合格しているという努力家でもある。また、優しいので友だちや後輩からも慕われて、いつも相談を受けていて、いそがしく動き回っている。そんな彼女も時折、寂しさを感じる年齢になったとようだ。相談を受けた私はうまくいえなかったが、いろいろと話を聞いているうちに何となくおさまりがついたのか、元のあかるい顔に戻ったようであった。乙女のなやみは尽きない。
授業は教材研究もばっちりで少しやりにくい教材だったが学生の関心を何とか引いて、最後まで意欲を持たせて終えることができた。そんなことで、夜の七時からの日本語教室も慌しい中で行くことかできた。学生たちと時間待ちのために卓球をしていると、３年の曾さんと肖さんが二人で来て、お願いしたいことがあるとのこと。言いにくそうにしながら、実はいっしょに廬山に行かないかと言う。私も廬山の町はまだ見ていないので行きたいと思っていた。ところがよく聞いてみると明日からの２泊３日なのだという。あまりに急な提案なのでその理由を聞いてみると、以前の知り合いの南昌にある江西経済大学の日本語人の日本語教師との約束があって廬山にいっしょに行くことになっていたらしい。そして、昨日連絡が入ったという。そこで、相手も学生二人と先生なのでこちらもぜひ私に行ってほしいとのことであった。少しとまどったが準備はすぐできるので思い切って了承すると、二人は跳びあがって喜んでいた。そんな様子を見ているとこちらもうれしくなって、宿舎に帰るとすぐリュックや靴などの準備をした。
最後の授業が終るのが３時３５分、待ち合わせの時間が４時１０分である。教室から宿舎、そして待ち合わせの校門の前に着いたのが約束の五分前。二人の学生と共に南昌からの先生や学生を迎えるために、九江駅に行く。５時の列車で３人も無事到着。その日本人の先生は田中さんという女性で、五十過ぎの先生である。私と同じで昨年の９月から中国で仕事をしているという。芯のしっかりしたそれでいてユーモアが豊かな先生である。学生たちもなついている様である。 そこから軽のライトバンのタクシーで東林寺へ向かう。約一時間で到着。昨年来たときよりきれいになっている。そこで先に来ていた三人の学生と合流。あわせて九人となった。そのあと、お寺の事務所で学生たちが私たちの泊まるところを相談してくれている。そして、私のために英語のできる若い学生のボランティアをつけてくれた。東林寺は日本ともなじみの深いお寺で、今度の大地震が起きたときも、すぐに祈りの祈祷をあげてくれたのだそうだ。その部屋は二段ベッドの八人部屋だが、金曜日なので学生と私を入れて四人、中国人が三人と日本人の私である。学生は私のために隣のベッドで泊まってくれるらしい。彼はアメリカのアリゾナ大学に一年間留学していたこともあり、何か困ったことがあれば行ってほしいと丁寧に話してくれた。他の二人のうち一人は敬虔な仏教徒のようで私に両手を合わせ、無事の到着を祝ってくれた。そして、すぐ本堂の方へ行ってしまった。もう一人は人生経験が豊なようなゆとりのやさしそうな顔をした五十ぐらいの人である。今晩の宿泊と明日の朝食は無料であると聞いて驚いた。その後、学生が寺内を案内してくれた。
朝は４時過ぎに遠くから聞こえてくる太鼓の音で目が覚める。先客の二人はもう起きていて、歯を磨いたり、着替えたりしている。隣の学生も起きると、私に朝のお勤めはどうしますかと尋ねてきたので、私も参加したいと言うと喜んでいっしょに行きましょうといってくれた。４時半に本堂に行くと２００人ばかりの僧侶と私たちのような一般人が２０人ほどがいる。位の高いお坊さんが入堂してくるとすぐに読経がはじまった。約一時間のお勤めが終ると食堂へいく。六時からの朝食、五穀粥が温かくて美味しかった。野菜ばかりだがいろいろなおかずをさらに入れてくれる。蒸したての饅頭やおかずはお代わりもできておなか一杯になった。最後に豆乳も出て、栄養満点である。食堂では５００人ほどの僧や参拝客の食事を二十人ほどのボランティアの人が世話をしてくれる。これが、来週の連休（労働祭）になると３０００人にもなるという。一緒に来ている中にも来週はここでボランティアをするのだと楽しそうに言っている学生がいた。 ７時に軽のライトバンタクシーで廬山に向けて出発。一時間あまりで廬山のふもとに到着。そこから歩いて上がるという。上まで車で上がると学生たちの入山料が大人と同じ１８０元だという。それはかわいそうなので山登りを楽しもうということでそこから歩いて上がることにした。道は登山客でにぎやかでる。両側には飲み物や土地の物産を売っている出店が並んでいる。やはり学生や若い人たちが多い。みんなで写真を撮ったり、お菓子を食べたりしながら歩いていると偶然にいつもお世話になっている九江市役所の于紅さんにばったりと出会った。于紅さんは体力づくりのために休みの日は時々山登りをしているとのことであった。１時間半ほどで廬山の町に到着。夏の避暑地であり、別荘がたくさんあり、おしゃれなその町並みはちょうど日本の軽井沢のようなところであった。旅館の予約はしていないので、これから探すといって学生たちは近くの人から情報収集をする。しかし、どこも満員だと断られたので、結局事前に聞いていた学生たちが泊まる安宿に部屋を見つけてくれた。その宿は裏町の細い階段を上がったところにある。部屋も廊下も学生の寮のようである。南昌からきた学生も、さすがに「ここは古いですね」あきれていた。でも、宿の女主人は学生に優しく宿賃も一人２８元というほかのホテルの十分の一ほどである。世話をしてくれた学生は私に「日本人とは言わないでほしい」という。理由は、中国では外国人をこんな安宿に泊めてはいけないという決まりがあるそうで、見つかると宿の主人は罰金を取られるのだそうだ。そこで、静かに部屋に上がってすぐ街の散策に出かけた。詩人白居易の草堂など名高い場所をゆっくり回り、晩御飯を食べておそくまで賑わっている町から宿に帰った。
日の出を見ようと学生たちと約束をしたので４時半に起きる。５時から宿の前の公園で待つが一向に学生たちは出てこない。そこらあたりをぶらぶらしているうちに夜も明け、６時になった。それでもまだおきてこない。昨日の４時起きが答えているのだろうと近くの店でおかゆと饅頭で軽く朝食を済ます。７時になって携帯に眠そうな声で「先生、申し訳ありません。」とおわび。笑いながら散歩に行きましょうと伝えると、いつもより早く準備を済ませて宿から出てきた。そこから徒歩でよく知られている別荘地域を散策。廬山会議で有名な宋美齢やパールバックの別荘や美しい散歩道などを楽しんで１０時３０分のバスで九江にもどった。バスに乗ったとたん、携帯に連絡が入る。「先生、今晩はよろしくお願いします。」そういえば、二週間ほど前に、２年生の学生たちと日曜日にカレーパーティーをしようと約束をしていたがすっかり忘れていた。でも、そんなことはおくびにも出さず、約束は４時だったね、待っていますよと言ったものの廬山からの急なカーブを下りていくバスに体を大きく揺らせながら、後の段取りを考えていた。
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