今日は、南昌に旅行も兼ねて日本語検定試験に引率して（されて？）行く。 まだ、電車にひとりで乗れないため、南昌出身の女子学生の張さんと二人で行くことになった。
朝、８時の待ち合わせ、しかし、８時になっても張さんが来ない。 え、もしかして、病気？ やばい、彼女がいないとどこにも行けないのに。
焦る気持ちで携帯電話に連絡する。
私 「大丈夫？ 張さん」
張さん 「ダイジョウブ です」
私 「よかった」
張さん 「モウスグ イキマス」
８時過ぎに、眠そうにやってくる。
私 「どうかしたの？」
張さん 「ワタシ ネムルノ ダイスキです。」
私の心の声 （そりゃあ、僕だってネムルノ好きだけど・・・。 朝寝坊したってこと・・・？）
タクシーで九江駅へ。 学校から１３元くらい。 ネットで事前予約した切符を構内の窓口に買いに行く。 中国では切符を買うにはパスポートを見せる必要がある。 留置所の面会の時に見られるようなカウンターの下の穴からそっとパスポートを入れる。 何やら難しそうな顔。 幾分ドキドキする。 よそ見してたら急に投げて返される。 エ～。
私 「帰りの切符は、予約してないの。 しといて、と言ったでしょう？」
張さん 「ダイジョウブです」
私 「 ソウ 」 中国語的発音になる。
構内に入って、空港で見られるお荷物チェックがある。 やる気がなさそうな人民服似の制服を着たおばちゃんが棒みたいなチェッカーで検査する。
私の心の声 （ そ、そんなんで分かるの？ ）
中国の電車は、最初に Ｄ とか、アルファベットが付く。 改札口は、大混乱。 さすが中国、人が多い。 プラットフォームに着くとなにやら見覚えがある電車。 これって新幹線じゃん。 中に入っても似ている。 というより、そっくり。 少し、心に余裕が出来る。
出発までモニターでトムとジェリーが放映中。 意外と面白く、しばし鑑賞。
私 「これって、トムとジェリーだよね？」
張さん 「マオ～マオズ。」
私 「え。 何？」
張さん 「ネコとネズミ」
私 「あ～ そうなのね」
さすが新幹線もどき。 早くて快適。
私 「ところで 南昌てどんなとこ？」
張さん 「トッテモ コワイ トコロ。」
私 「え、なんで？」
張さん 「ドロボウがタクサン イマス。」
私 「え、ウッソー」
張さん 「ホント」
私の心の声 （ あ～たも 南昌人でしょう。 まじかよ。 南昌人が言うから間違いなさそうやし。 少し、怖くなってきたな～）
約１時間で南昌に到着。
さすが省都、駅もデカイ。張さんは勝手知ったる何とかでさっさと地下のタクシー乗り場へ僕を連れて行く。
運転手は、怖そうなお兄さんだ。張さんが何なら大声で交渉中。
私の心の声 （た、頼もしい。）
タクシーの中は、九江とは違い、強盗よけの金網のバリケードがある。
私の心の声 （確かに張さんの言う通りかもしれない。）
２０分位乗った後、タクシーを降りて。
私 「お腹減ったね。張さんもお腹空いたでしょう。」
張さん 「アサゴハン タベテイマセン」
私 「どこか、食べる所、しっていますか。」
張さん 「シツテ イマス。」
僕を裏通りに連れて行く。日本で云えば角を曲がった横丁って感じ。
おお、古くてしかも汚そうな店。とんねるずのキタナシュランに推薦したいような店だ。
私の心の声 （でしようね。これで美味しく無かったら、怒るからね。）
恐る恐る口に入れる。
張さんは、至極マイペース。朝ご飯食べていない割には、ゆっくりゆっくり食べる。 自分がちょっと、がっついたことを反省する。早食いは、美徳ではないのだ。
南昌観光もそこそこに、日本語検定試験がある近所のホテルで、受験生に激励のメールを送る。
みんな相当緊張している。でも、返事が僕への感謝の気持ちでいっぱいなのが嬉しい。
翌朝、大学内を散策。途中、試験場と思われる建物を発見。祝日本語検定試験会場と中国語の漢字で書いてあった。
早めに来た受験生から（先生）と声を掛けられる。何やらほっとする。みんながんばって、先生を近くで応援してるからね。と励ます。
南昌大学も九江学院と同じような雰囲気だ。学生は、学内の公園で芝生に座ったり、寝そべったりして本などを読んでいる。牧歌的というか日本の大学では最近見ないような風景だ。中にはアベックがしっかり寄り添っている。と言うより抱き合っている。これも、開放政策の一つの成果かと至極感心する。
昼食後、トイレに行きたくなり探すが見当たらない。今日は日曜日で校舎のトイレにも下手に近寄れない。
日本語で「トイレはどこですか？」だ。九江の学生さんからもお墨付きを貰っているし、きっと大丈夫のはずだ。
前の方から、人の良さそうな2人の男子学生がやって来た。よし、ターゲットは彼達だ。少し、ドキドキするが、勇気を出して彼らの前に立ちふさがり。いざ、出陣。
私 「ニイハオ、ツゥア ソウァ ザイナーリ」
二人の学生 「？。。・？？」
私の心の声 （何？そのリアクション。不思議そうな目と悲哀に満ちたその眼差しは。）
私 もう一度、 「ニイハオ、ツゥア ソウァ ザイナーリ」
私の心の声 （いかん、声が上ずっている。脂汗が出てきそうだ。）
二人の学生 「？。。・？？」
私 「ァ、 アイム、ソリー」と愛想笑いをして、その場から逃げるように立ち去る。
私の心の中 （なぜだ、何がいけないんだ。それに、なんで急に俺はジャパニーズ英語になるんだ。シェ、シェーだろうが。）
しばし、自己嫌悪に陥る。
そうこうしている内に、待ち合わせの約束時間の４時３０分になった。
待ち合わせの場所の游泳館は、南昌大学の正門（だろう。）近くにあり、割と分かりやすい所にあった。
迎えに来るのは、藍さんとスーさんだ。
この二人は、僕が担当する１年生の授業のアシスタントをしてもらっていて、３年生の中では、１．２番の秀才だ。南昌の張さんは自宅に用事が出来たのと事で明日一人で帰るとのことであった。
ツッコミどころ満載で小ボケの利いた（本人はそのつもりはないと思うが。）張さんとは違い、藍さんは、江西省中部の出身で落ち着きのあるしっかり者だ。
しかし、５時３０分になっても来ない。
先ほどのトイレの件でずいぶん弱気になっている。
福岡の博多には、博多時間といって、通常の日本人の時間感覚より幾分おおらかで、大陸的な要素を踏まえた時間概念が存在する。 しかし、その博多時間をもってしても有り余る中国時間（と命名します。）なるものに幾度か遭遇した。
最初は、私の赴任時の飛行機がなんと1時間半延着。日本で飛行機がこんなに遅れれば大変なことであり、いろいろな想像をしてしまう。この時の浦東空港での待機時間の間には、映画「大空港」の名場面が幾度となくフラッシュバックしたことは言うまでもない。
そして、直前方式でもあるらしい。直前方式の利点としては、気の弱い先発ピッチャーなどには有効であろう。しかし、これまで根回しと事前確認を常としてきた私にとっては、慣れるまでいささか時間を要するような気がする。
中国では、このようなことは至ってノーマルなことらしい。
話を戻すが、中国の大学は、基本的に全寮制である。寮は、昔の公団の団地みたいな配置と形状で、一部屋大体５～６人で生活する。エアコンは付いて無いらしくいつも寒い寒いと言っている。私の部屋に来て、暖かいと言ってはエアコンを羨ましそうに眺めて帰る学生もいる。洗濯も手洗いで冬場は辛そうだ。料理は、火災予防のため禁止。専ら、学食だ。
私 「遅かったね。どうかしたの？」 と聞く。
藍さん 「シケンが ムズカシカッタです。ジシンがナイところタクサンあります」 と か細い声で応える。
どうも、友達と答え合わせをしていたみたいだ。私も試験には随分苦労した人間だから気持ちは良く解る。
私 「お腹減ったでしょう。何か食べる？ 」 と聞く。
藍さん 「ワタシ、ショクヨクありません。」 とさっきより、より小さい声で応える。
私 「じゃ、南昌駅に着いたらまた、考えようね。」 と言ってバス停に向かう。スーさんも呉さんも同じく元気がない。
励ます意味も含め歩きながら。
私 「さっきさ～ 南昌大学の学生さんに、中国語でトイレの場所聞こうとしたら、通じなかったよ～ 君たち、上手です。っていってた よね～ 」 と出来るだけ明るく言う。
スーさん 「ワタシタチは、ナレテイマス」
私の心の声 （そ、そういう問題かな～。なんだかな～、、、、）
＜深いぞ、中国語。＞
九江は古くから廬山や東林寺などの観光地が多くあり、町並みも綺麗で全体的にゆっくりしている感じがするが、そのようなことも関係しているのかも知れない。
バス停には、我が校の受験生で幾つかのグループもバスを待っていて、（先生、先生）と声を掛けてくれる。
みんな疲れてるはずなのにありがたい。
中国のバスは、基本的に前から乗り、後ろから降りる。市内循環線があり、概ね１元だ。（１元＝16～17円） 降りるときのブザーは無く、声を掛け合っている。（と思う。）
南昌駅までラッシュ時でもあったため、約1時間以上要した。
